発言は意味を変えない範囲で、読みやすい形に整えています。
「女の子は、かわいくて当たり前でしょ!」

そう笑うのは、VRChatのイベントでキャストとして活動するひまりてんさんだ。
困り眉に八重歯、少し小悪魔的でありながら、どこかお姉さんらしさも感じる表情。
そして、3度の飯より「ラーメン山岡家」が好き。
一度話せば、いくつもの強い個性が飛び込んでくる。しかし、彼女の魅力は目を引く言葉や姿だけではない。
相手の声色や小さな動きを見て、会話の選択肢をいくつも用意する。距離を近づけるときには段階を大切にする。その根底にあるのは、「目の前の人に喜んでほしい」という気持ちだった。
今回は、ひまりてんさんがVRChatを始めたきっかけから、二つの猫系イベントで見せる異なる顔、“あざとかわいい”接客の裏側、そして今後の夢まで聞いた。

「ひまり」と「テン」、そして山岡家

――まずは、簡単な自己紹介をお願いします。

3度の飯より山岡家!
「にゃん天使♡ふぁんたじあ」2期生の、ひまりてんです。

――「ひまりてん」という名前の由来を教えてください。

元々「ひまり」という名前が好きだったんです。それと、テンやオコジョのような動物も好きで。「ひまり」と「テン」を合わせたら、ひまりてんってかわいいなって思って、この名前になりました。
VRChatを始めたのは、2026年2月頃。きっかけは、某有名配信者と某宇宙人の動画だった。
動画に登場する、少し不思議で印象的なビジュアルに惹かれたというひまりてんさん。当時は、VRChatでアバターをここまで自由に作り、改変できることも知らなかった。
始めたばかりの頃は、フレンドと一緒にさまざまなワールドを巡った。ホラーが苦手にもかかわらず、好奇心からホラーワールドへ飛び込むこともあったという。
しかし、最初に向かった場所の一つは、やはり山岡家のワールドだった。

メニューやギミックを見ながら、後方腕組み彼氏みたいな気持ちで「よくできているな」と楽しんでいました。先日は、そのワールドで初めてV睡もしたんですよ。薬味ネギの上で寝ました。
「ひまり、メイドにならないか」
ひまりてんさんにとって、初めてのキャスト活動が「にゃん天使♡ふぁんたじあ」だった。
きっかけは、以前から交流のあった0期生・MIRITANさんからの誘いだ。

「ひまり、メイドにならないか」と声をかけてもらったのが始まりです。歌うことも好きで、別の世界線では歌っていたこともあるので、ライブがあるイベントなのも魅力でした。
現在は週に3~4回ほど、イベントキャストとして活動している。出演がない日にもUnityを触り、アバター改変を進めることが多いという。
VRChatを始めた頃は、週に1、2回ほどしかログインしていなかった。しかし、キャストになってから仲間が増え、今ではほぼ毎日のようにVRChatへ入るようになった。
ひと言の誘いから始まったメイドとしての日々は、彼女のVRChatでの過ごし方そのものを大きく変えていた。
同じ“猫”でも、距離感はまったく違う
ひまりてんさんは、「にゃん天使♡ふぁんたじあ」に加えて、「雨の日に拾った君は、猫でした。」にも所属している。
どちらも猫をモチーフにしたイベントだが、接客で求められる距離感と役柄は大きく異なる。

――2つのイベントの、1番大きな違いは何ですか?

距離感がまったく違います。「にゃん天使♡ふぁんたじあ」では、メイドとしてご主人様やお嬢様にお給仕をする立場です。一方の「雨の日に拾った君は、猫でした。」では、拾っていただいた猫として接します。
声の演技を学んだ経験もあり、元々TRPGも好きだった。幼い頃からミュージカルや宝塚にも親しみ、演じることそのものが好きだった。
だからこそ、RPに対する恥ずかしさはほとんどないという。距離の近い振る舞いには今も少し恥じらいがあるが照れながらも、イベントごとの世界観に合わせて自分の見せ方を切り替えている。

自我を出しすぎると、世界観に違和感を与えてしまうこともあります。だから、それぞれの雰囲気に合ったRPを心がけています。「雨の日に拾った君は、猫でした。」では、山岡家節を出しすぎないようにしていますね。
一方、「にゃん天使♡ふぁんたじあ」での姿は、普段の自分に近い。無理に役を作り込むというより、自然体のまま、かわいいメイドとして接客しているという。
それでも「ご主人様」「お嬢様」という呼び方は欠かさない。
頭の中には「5個の変化球」
ひまりてんさんは、自分のことを「あざとさの星に生まれている」と表現する。
その言葉だけを聞けば、天性の振る舞いだけで人を惹きつけているように思えるかもしれない。しかし、話を聞くほどに見えてきたのは、観察と準備を積み重ねる姿だった。

――接客では、どんなことを意識していますか?

「この人には、こういうことを言ったら喜んでもらえそう」「こうしたら、私のことをもっと好きになってくれるんじゃないかな」と、頭の中でずっと考えています。
会話の変化球も、5個くらい用意しています。一つの話題で反応が薄ければ、別の角度から投げてみる。相手が話したそうなら、今度は私が聞く側に回ります。
声色や肩の動き、ほんの少しの体の動きから、相手が楽しめているかを考える。会話に慣れていない人や無言勢の人には、イベントを知ったきっかけや推しのキャストを尋ねながら、ひまりてんさん自身が会話をリードする。
推しがまだいなければ、自分の魅力をしっかり伝えることも忘れない。

自己PRはたくさんします。「今がチャンスですよ」って。
罪な女、やっています!
接客のために、人との関わり方について書かれた本を読むこともある。特に、相手の自尊心を高めるコミュニケーションを扱った本から学んだことは多いという。
彼女の“あざとさ”は、短い接客時間の中で相手を知り、その人に合った楽しみ方を届けるための技術でもあった。

もう、人が大好きなんです。人を喜ばせることが好きだから、「どうしたら楽しんでもらえるかな」と考えるのも楽しいんですよ。
距離を近づけるときは、段階を大切に
VRChatの接客イベントでは、アバター同士の距離が近くなることもある。
ひまりてんさんが大切にしているのは、相手の反応を見ながら、少しずつ距離を縮めることだ。

いきなり距離を詰めるのではなくて、最初は会話をする。次に少し座る距離を近づけて、相手の反応を見ながら、互いに無理のない範囲でスキンシップへ進む。距離感は、段階を大事にしています。
わずかな反応を見落とさず、相手が安心して楽しめる範囲を探る。はきはきとした声や、かわいく見える動きにも気を配り、直接表情が見えにくいVRChatだからこそ、全身で「楽しい」と伝えている。
“あざとかわいい”という言葉の裏側には、相手をよく見て、一方的にならないようにする細やかな配慮があった。
初出勤で生まれた『卍解オムライちゅ』
接客中の思い出を尋ねると、初出勤の日に起きた“オムライス事件”を教えてくれた。
「にゃん天使♡ふぁんたじあ」では、メイドがオムライスへ文字やイラストを描く。他のキャストがかわいい猫などを描く中、ひまりてんさんは「バリカタ」「マシマシ」「卍解」「生きろ」といった、ひときわ異彩を放つ言葉を残してきた。

初出勤のときは緊張で手が震えて、「卍解オムライちゅ」と書いたんですけど、ものすごくぐちゃぐちゃになってしまって。
――ダイイングメッセージみたいでした。
しかし、その場にいたご主人様は失敗を責めず、「大丈夫だよ」と励ましてくれた。
さらに、「これを面白くできるのが、ひまりてんさんの才能だよ」と言ってもらえたことが、今も心に残っているという。
失敗は忘れられない思い出になった。そして現在は、自称「オムライス画伯」として、同じく山岡家好きのキャスト・くさび🍥さんと自主練を重ねている。
最初から完璧だったから印象に残ったのではない。失敗すら笑いに変え、次の努力に繋げる姿が、ひまりてんさんらしさなのだろう。

自称「オムライス画伯」による渾身の一皿。「バリカタマシマシ」や「卍解」の文字が並ぶ。
水色とオレンジ、メスガキとお姉さん
ひまりてんさんがメインで使っているアバターは、Mayoだ。
イベントによって服装や色は変えるが、顔立ちは変えない。「オールMayo」と言い切るほど、長く使い続けている。

――ひまりてんさんらしい改変になる条件はありますか?

困り眉と八重歯、ハイライトのない目。それから、一番メスガキっぽい顔にすることです。でも、全体は少しお姉さんっぽくしたいんですよ。メスガキっぽさと、お姉さんっぽさをうまく混ぜたいです。
イメージカラーは水色とオレンジ。
水色は、物心がつく前から好きだった。家族によれば、赤ちゃんの頃は水色のパジャマでなければ泣いてしまうほどだったという。オレンジは、昔から好きなオレンジジュースに由来している。

ずっと、水色とオレンジの人生だったんです。
困り眉の小悪魔的な顔に、お姉さんらしい雰囲気。水色とオレンジという一見対照的な色も含めて、異なる要素を自分らしく組み合わせることが、ひまりてんさんの改変の魅力になっている。
「血液は山岡家」ファンにも広がる“ひまてんカスタム”
ここまで何度も登場した山岡家についても、詳しく聞いた。
ひまりてんさんが山岡家を訪れるのは、週に4日ほど。多い日には朝と夜の2回足を運ぶこともあり、本人が「血液と一緒」と表現するほど生活の一部になっている。

山岡家は、もう血液と一緒です。食べると「生きているな」と感じます。夏バテには、麦茶より背油汁ですよ!
そんな彼女には、いつも注文している「ひまてんカスタム」がある。
| 項目 | ひまてんカスタム |
| ラーメン | 特製味噌 |
| 麺 | バリカタ |
| 油 | 普通 |
| 味 | 普通 |
| トッピング | ほうれん草、のり増し、バター |
| 卓上調味料 | ニンニク3杯、コチュジャン1杯、お酢を器に3周 |
| サイド | 半ライス |
油多め、味濃いめの注文も本人の好みだという。まずは基本のひまてんカスタムを再現し、さらに濃さを求めたい人は油と味を変えてみてもよさそうだ。
ファンからは、「ひまてんカスタムを食べた」とDMで報告が届くこともある。好きなものを発信し続けた結果、一人の定番注文が、ファンも一緒に楽しむ合言葉のような存在になっていた。
山岡家コンビ「バリカタマシマシ」
そんな山岡家好きをきっかけに、くさび🍥さんとは「山岡家コンビ」として親しまれるようになった。現在は「バリカタマシマシ」というユニット名も決まり、活動外でも仲の良い二人だ。
ひまりてんさんはライブで山岡家の曲を歌うことを決めており、くさび🍥さんがライブメイドになった際には、二人で歌うことも考えている。
好きなものを隠さず、周りまで巻き込みながら新しい楽しみに変えていく。それもまた、彼女が人に覚えてもらえる理由の一つなのかもしれない。
歌い、作り、いつかは引っ張る側へ

――今後、挑戦してみたいことを教えてください。

ライブステージが中心で、アイドルのように自分でセットリストを組むイベントに出てみたいです。
もっと自分が大きくなれたら、いつか運営や主催にも挑戦してみたい。人を引っ張ることは嫌いじゃないので、自分のイベントもやってみたいですね。
さらに、可愛い女の子がラーメンを作ってくれるイベントも考えているという。ぜひ、山岡家コンビで実現してほしいイベントだ。
ライブ、イベント運営、そしてラーメン。今は別々に見える目標も、ひまりてんさんの手にかかれば、いつか一つの場所へ集まるのかもしれない。

取材後記
取材中、ひまりてんさんの口からは「あざとい」「罪な女」という言葉が何度も飛び出した。
しかし、話を聞き終えて強く残ったのは、器用に人を惹きつける姿よりも、そのために相手をよく見て、考え、学び続ける勤勉さだった。
会話の変化球を用意するのも、相手の小さな動きを見るのも、失敗したオムライスを練習し直すのも、始まりはいつも「人を喜ばせたい」という気持ちだ。
あざとくて、かわいくて、山岡家への愛が強い。そして、そのすべてを誰かの笑顔へ変えてしまう。
ひまりてんさんは、一度会ったら忘れられない。
まるで山岡家のように、気づけばまた会いに行きたくなるキャストだった。
ひまりてん
VRChatのイベントで活動するキャスト。「にゃん天使♡ふぁんたじあ」「雨の日に拾った君は、猫でした。」に所属。相手の反応を細かく見ながら会話と距離感を組み立てる、“あざとかわいい”接客を持ち味としている。歌やRP、アバター改変を好み、三度の飯よりラーメン山岡家を愛する。将来はライブイベントへの出演や、イベント運営にも挑戦したいと考えている。

