
VRChatの中で見ていたものが、目の前に現れる。
アバターがグッズになり、VRChatで育った集会が一冊の本になり、誰かの「作りたい」が人よりも大きなロボットになる。
しかも、その熱気は会場の中だけでは終わらない。昼食やコラボ企画を追って秋葉原の街を歩き、最後には人の手で作られた温かい食事へとつながっていった。
VketReal 2026 Summerの1日目。
午前10時の会場到着から、会場をあとにする大きなぬいぐるみを見届けるまで、筆者が実際に歩いた一日を紹介する。
筆者初のVketRealの1日目の体験レポートになります。出展ブースのまとめ記事ではございません。
午前10時、最初に出会ったのは巨大なロボットだった
会場へ到着したのは午前10時。
午前11時までは会場内を歩きながら、気になった展示を見て回った。
そこで最初に足を止めたのが、地下1階にブースを構えていた「勇者技術研究所」のリアルスケール変形ロボだ。

会場でひときわ大きな存在感を放つ機体。その活動には10~20人ほどが関わっているという。
黒いモーターの内部にはセンサーが組み込まれており、グローブを使って5本の指を動かすことができる。


なぜ、これほどのロボットを作ろうと思ったのか。
始まりにあったのは、ロボットが好きだという気持ちだった。
誰かが作ると思っていた。しかし、誰も作っていなかった。だから、自分で作るしかないと考え、活動を始めたという。
待っていても、欲しいものは現れなかった。
だから、自分たちで作る。
巨大な機体も、5本の指を動かす仕組みも、最初は自身の「ロボットが好き」から始まっている。
さらに、この日はロボットを実際に動かして戦わせる国際大会も行われていた。会場には、その大会で戦う予定のロボットの姿もあった。

VketRealの1日目は、画面の中にあったものが現実へ飛び出してきたような、巨大なロボットとの出会いから始まった。
午前11時、Vket公式ブースへ
午前11時からは、1階のVket公式ブースを回った。
この時点で、会場には多くの来場者が集まっていた。
見渡せば人、人、人。

午前11時の会場前の人だかりの様子
各展示の前には足を止める来場者がいて、会場全体からVketRealへの熱量が伝わってくる。
しかし、人の多さに対して移動しづらさはほとんど感じなかった。導線がしっかりと作られており、混雑のなかでも展示を見て回りやすい。
これだけの来場者を受け入れながら、会場を歩く楽しさを損なわない。そのおかげで、気になった展示を見つけては立ち止まり、また次の場所へ向かうことができた。
書いた痕跡が残る「ペンタラティクブ」
PONDAさんが開発した「ペンタラティクブ」では、書いたものを痕跡として残すことができる。


PONDAさんは「VR待ち合わせ」との違いについて、書き残しておけば、その人がその場にいた痕跡が残ることを挙げていた。
直接会えなかった相手とも、そこに残されたものを通してつながることができる。
また、外国のユーザーとも交流しやすく、ワールドワイドなサービス展開も考えられるという。
一度きりのやり取りで終わらず、誰かがいたことを次の誰かへ伝える。VR上での交流を、別の角度から広げていく展示だった。


NuNuAIが展示する「NuNuPC」
株式会社NuNuAIのブースでは、「NuNuPC」が展示されていた。
展示が終わり次第、販売を予定されているとのこと。NuNuPCについては2日目に詳しい話を聞いているため、今回の記事では出会ったことだけに留め、詳細は2日目のレポートで紹介したい。

17LIVEと、演出付きのMRスロット
17LIVEでは、自販機型の展示を体験できた。アプリをダウンロードすると、ポストカードを受け取れる企画も行われていた。
そのほか、MR(複合現実)で楽しめるスロットも登場。スロットには演出が用意されており、ただ展示を見るだけではなく、自分で触れて体験できる内容になっていた。

ロボットを見ていたと思えば、次は誰かの痕跡を残す仕組みに触れ、気づけばMRでスロットを回している。
次に何が出てくるのか分からない。この予想できなさも、VketRealを歩く楽しさの一つだった。
昼食は「やきとん元気 電気街口店」へ
午前中の展示を回ったあとは、昼食のために一度会場を出た。
向かったのは、「JOIN大作戦」でコラボしていた「やきとん元気 電気街口店」。店では昼食をいただき、コラボカードも受け取った。
この日の秋葉原は、とにかく暑かった。朝から会場を歩き続け、外へ出れば夏の暑さが容赦なく体力を奪っていく。そんな中で入った「やきとん元気」は、まさにオアシスだった。
ずっと歩きっぱなしだったこともあり、席に座って一息つける時間が、思っていた以上にありがたい。
会場では次々と新しい展示に出会い、街へ出ればコラボ先が待っている。
VketRealの一日は、立ち止まる暇もないほど濃い。
だからこそ、こうして食事をしながら休める場所があることも、街を巡る企画ならではの楽しさだと感じた。
このあとは午後の取材が控えていたため、今回は食事だけで店をあとにした。もし取材がなければ、ここでお酒を飲み、そのまま一日を終えるのもよかったかもしれない。



午後はパラクリエリアで取材
昼食を終えたあとは会場へ戻り、午後からパラクリエリアで取材を行った。
ここでは、VRChatで生まれた活動や「好き」が、さまざまなグッズや本になって並んでいた。
T03「QuickBrown」——電気を流すと透明になるミラー
T03「QuickBrown」で体験したのは、VRChatで見慣れたミラーを現実に再現した展示だ。
一見するとただの鏡だが、その前にはフィルムが取り付けられている。電気を流すことでフィルムが透明になり、見え方が変化する仕組みになっている。


企画には3カ月、制作には1カ月をかけたという。
切り替わる瞬間は一瞬。しかし、その一瞬を実現するまでに、長い準備と制作の時間が費やされている。
E01「VRC合法チート研究会」
E01「VRC合法チート研究会」で、筆者が訪れた時点ですでに完売していたのが、チセちゃんのアクリルスタンドだ。

なかでも印象に残ったのは、各アバターと飲み物を組み合わせたステッカー。
単に好きな飲み物を持たせているのではなく、「このアバターなら何を持っていそうか」を考えてデザインしているという。

さらに、アバターの年齢にも気を配っている。
小さなステッカーの中にも、アバターに対する解像度と配慮が詰め込まれていた。見た目の可愛さだけで終わらず、そのアバターらしさまで考えて作られている。
このシリーズは、すでに第3弾も予定されている。
ブースでは、企業と協力して制作したというスケールフィギュアも展示されていた。細部まで作り込まれた高いクオリティは、思わず足を止めて見てしまうほど。

一つのアバターを好きになる。その「好き」を調べ、考え、現実の形へ変えていく。
VRC合法チート研究会の展示からは、創作物が完成するまでに込められた熱量が伝わってきた。
今回の取材でもうひとつ紹介しておきたいのが、インタビューに応じてくれたSOU367さんの著書『メタバースで商売やってみた』だ。

本書は、VRChatやBOOTHでの創作活動を通じて、300円の商品から2,000万円を売り上げるまでの経験をまとめた一冊。「メタバースで何かを作ってみたい」「商売に興味はあるけれど、何から始めればいいのか分からない」という人にとって、最初の一歩を踏み出すヒントが詰まっている。
メタバースでのものづくりや、その活動を商売へつなげていく過程が気になった方は、ぜひ手に取ってみてほしい。全国の書店やAmazonから購入可能だ。
E08「えも研」
E08「えも研」で最も売れたのは、マグカップとコースターのセットだった。

マグカップのデザインは、出展者自身が担当している。
自分で手がけたデザインが現実の商品となり、会場で実際に来場者の手へ渡っていく。まさに、バーチャルでの創作が現実へ飛び出した瞬間だ。
紙袋もデザインと品質に拘っており、ただの包装用としてでなく、記念に残しておきたいと思えるものになっている。
また、手荷物が増えがちなVketRealにおいて、持ち運びのしやすい形で販売されているのは、とても有難いのではないかと、私は思った。
そして、ブースでもうひとつ目を引いたのが、えも研のオリジナル3Dモデル「コロネ」のフィギュアだった。

こちらは非売品だが、耳のように付いたパンのパーツを交換できる特別仕様となっている。足元にはクロワッサンやコロネなど、付け替え用のパンが並べられており、細かな部分まで「コロネ」らしさが再現されていた。
実はこの仕掛け、フィギュアだけのものではない。VRChat内の「コロネ」も頭のパンを切り替えられるほか、手に持って食べることまでできる。アバターならではのギミックが、現実のフィギュアにも落とし込まれているのが面白い。
自分で作ったデザインが商品となり、VRChatで親しまれているアバターが立体物になる。
VRChatでの活動や創作が、目の前で触れられる形になっていく。そんなバーチャルとリアルのつながりを感じられるのも、VketRealの面白さだ。
F13・F14「もかんち」
F13・F14「もかんち&きりさきちゃんす!」では、VRChatの「Questラーメン集会」にまつわる展示が行われていた。
会場にまとめられていたのは、約90人が選んだ全国各地のおすすめラーメン135杯。
数字だけでも圧倒されるが、その一つひとつに「誰かが実際に食べ、誰かにおすすめしたいと思った一杯」がある。単なる店舗情報の一覧ではなく、参加者それぞれの思い出や好みが集まってできた展示なのだ。
全国のラーメンがずらりと紹介されている光景は、眺めているだけでも面白い。知らない土地の一杯に興味を引かれる一方で、展示の中には私の地元である青森のラーメンまで紹介されていた。
遠く離れた秋葉原の会場で、見覚えのある地名を見つけた瞬間は少しうれしかった。135杯という大きな数字が、急に自分にとって身近なものへ変わったようにも感じられた。
ラーメンという一つのテーマを通して多くの人が集まり、好きなものについて語り、情報を持ち寄る。そこで生まれた成果が、今度は現実の会場を訪れた人へ届けられていた。



誰かのお気に入りの一杯が、展示を見た別の誰かにとって、次に食べに行きたい一杯になるかもしれない。
VRChatの集会で生まれた熱量は、VRChatの中だけでは終わらない。コミュニティが積み重ねてきた交流や記録が、現実で触れられる形になっていることが印象的だった。
午後3時、サキュバス酒場LILITHとのコラボへ
HUBチョムチョム秋葉原店へ入ると、最初に出迎えてくれたのは、VRChatユーザーにはお馴染みの「ポピー横丁」の看板だった。

見慣れた看板が現実の店舗に置かれているだけでも、不思議な感覚になる。VketRealの会場を離れたはずなのに、別の入口から再びバーチャルの世界へ足を踏み入れたようだった。
店内のテレビに映し出されていたのは、色気たっぷりの扇情的なサキュバスたち。だが、用意されていたのは単なる映像ではない。


テレビの向こうにいるサキュバスたちは、実際にHUBを訪れている客とリアルタイムで会話を交わしていた。画面に映るアバターへ話しかけると、その場で反応が返ってくる。現実の店内とVRChatのポピー横丁が、テレビを一枚挟んでつながっているのだ。
同じ場所にいるわけではない。それでも会話が始まれば、画面の向こう側も含めて一つの酒場になっていく。普段のVRChatで交わしている会話を、現実のパブにいながら楽しめるのが面白かった。
店内では、サキュバス酒場LILITHとのコラボドリンクも提供されていた。


私は「冒険者の凱歌」を注文し、取材を手伝ってくれていた友人は「Nick」を選択。見た目にも鮮やかな二杯を並べ、コラボ限定のコースターと一緒に楽しんだ。会場を歩き回ったあとに飲む一杯ということもあり、味わいながらゆっくりと休める時間になった。
多くの客でにぎわう現実のHUB。その店内に掲げられたポピー横丁の看板と、テレビの向こうから語りかけてくるサキュバスたち。
HUBチョムチョム秋葉原店で体験できたのは、単なるコラボメニューだけではない。現実でグラスを傾けながら、VRChatの住人と同じ酒場の時間を共有する――バーチャルとリアルの境目が曖昧になる、VketRealらしいひとときだった。

HUB内の様子
夕食はメイド喫茶橙幻郷で
HUBをあとにし、夕食のために訪れたのは「メイド喫茶橙幻郷」だ。
そこで日替わりの手作り定食を食べた。

久しぶりに、愛情たっぷりの手作りを食べた気がする。
朝から会場を歩き、多くの展示を見て、出展者から話を聞いた一日。その最後に温かい食事を口にすると、自然と気持ちまで温かくなった。
会場へ戻ると、ぬいぐるみも帰るところだった
夕食を終え、もう一度会場へ戻った。
すると、会場で見かけていた大きなぬいぐるみが、ちょうど退場するところだった。

朝10時、巨大なロボットとの出会いから始まった一日。
その最後に見たのは、会場をあとにする大きなぬいぐるみの姿だった。
その姿を見届けて、筆者のVketReal 1日目は終了した。
「好き」は、画面の中だけでは終わらない
誰も作っていないなら、自分で作ろうと始まったロボット。
企画と制作に時間をかけたQuickBrownのミラー。
その場にいた人の痕跡を残す、ペンタラティクブ。
アバターを考え抜いて作られたステッカー。
自身でデザインしたマグカップ。
約90人の好きが集まった、135杯のラーメン。
そして、会場の外で待っていたコラボ企画と、人の手で作られた温かい食事。
形はすべて違う。しかし、その始まりには「これが好き」「これを作りたい」「誰かへ届けたい」という気持ちがあった。
VketRealでは、VRChatで育った気持ちや活動が現実へ飛び出し、商品になり、技術になり、人と人が出会うきっかけになっていた。
VketRealは、ただ買い物をするための場所ではない。
画面の向こうにいた人が、何を考え、何を作り、何を好きでいるのか。その熱量に、現実で触れられる場所だ。
朝10時から一日を歩いても、まだ見られたのはその一部にすぎない。
それでも、1日目だけでこれだけの出会いがあった。
そして、まだ2日目が残っている。
次回は、今回詳しく触れられなかったNuNuPCをはじめ、2日目に各サークルから聞いた話を届けたい。



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